東京高等裁判所 昭和51年(行ケ)118号 判決
事実及び理由
審決に原告主張の取消事由があるか否かについて考察する。
1 第一引用例の公知性について
成立に争いのない乙第一号証によると、第一引用例の刊行物は、昭和二八年五月二三日工業技術院東京工業試験所に受け入れられ、爾後一般の閲覧に供し得る状態にあつたことを認めることができ、右認定に反する証拠はないから、審決が第一引用例をもつて本件考案出願前国内に頒布された刊行物であると認定したのは正当である。
2 本件考案の考案性について
第一引用例に審決が前掲理由中において認定した記載(〔編註〕標準の葉の割れ目のある管状基部に茎とは互いに押し込んで結合された造花の花の記載)があること、本件考案と第一引用例の造花の葉とが構成上、審決認定の一致点、相違点を有することは原告の自認するところであつて、両者の相違は、造花の葉の茎部に設けられた花茎挿入用管体を、本件考案が「割れ目」のないものに構成したのに、第一引用例のものが、「割れ目」のあるものに構成した点にある。ところが、成立に争いのない甲第六号証の六(第二引用例)によると、第二引用例には、プラスチツク製造花において、花弁や萼の基部を割れ目のない漏斗状に形成し、その漏斗状部を嵌め合せることによつて花弁や萼を係止させる技術が記載され、右技術は同引用例によつて本件考案出願前すでに公知となつていたことが認められ、また、右技術において係止させるものが造花の花弁や萼であつても、葉であつても、その間に差異があるべき筋合はない。
そうだとすれば、造花の葉の基部に設けられた管体につき、公知技術である割れ目のないものをもつて第一引用例における割れ目のあるものに代えることにより本件考案のように構成することは、当業者にとつて極めて容易であつて、格別の考案力を要しないものというべきである。
原告は、本件考案には、管体の形が崩れず、また、葉の取付けを強固にするという各引用例にない作用効果がある旨を主張するが、本件考案が構成上、第一引用例と相違する点は右公知技術と、また、第二引用例と相違する点は第一引用例のものとそれぞれ同等のものにすぎないから、右主張のような作用効果はいずれも本件考案に特有のものということができない。
以上の次第で、審決が、本件考案を第一、第二引用例に基づき当業者が容易に想到し得たものであつて、旧実用新案法第一条の考案に当らないとして、その登録を無効にすべきものとしたのは正当である。
よつて、本件審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求を失当として棄却する。